ジェフリー・ボーン (Jeffrey Bohn)One Concern最高戦略責任者

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が最近公表した「気候変動2022:影響・適応・脆弱性」で、世界の科学者コミュニティによる気候分析が詳述されました。今回の報告書では、世界各地ですでに発生している影響に対処するためには、緩和策だけでなく、気候変動への適応が求められるという緊急性が伝えられました。

緩和策だけではもはや、気候変動に対する社会の役割を見通すことはできません。例えば温室効果ガス排出量の削減は、確かに重要ではあるものの、海面上昇などすでに私たちが引き起こしてしまった影響を食い止めるには不十分です。今後、海面上昇や気温上昇によって、台風災害が激甚化していくことが予想されていますが、こうした災害による直接的な被害を防ぐことに加え、これまで作り上げてきた世界にレジリエンスを組み込むことも私たちの責任なのです。

IPCCによる気候レジリエンスの定義は、当社の定義と大きく変わらず、リスクに直面しながら、本質的な機能を維持する能力とされています。その目的の達成のため、「包括的で、効果的かつ革新的な対応によって、持続可能な開発を進めるために、適応と緩和の相乗効果を活かし、トレードオフを低減することができる」と報告書は述べています。

この「適応」「レジリエンス」「緩和」という根本的な変革の三要素は、密接に関連しています。例えば、ある施設の系統電力からの供給を蓄電池と太陽光発電に代替(適応)することで、気候災害で系統の電力供給が停止しても持ちこたえられるようになり(レジリエンス)、同時に事業運営における温室効果ガスの排出量を抑えることもできます(緩和)。

ところがIPCCの報告書では、現在の気候適応戦略は「即時的かつ短期的な気候リスクの低減」ばかりを優先しており、根本的な変革を妨げ、意図しない影響さえも引き起こす可能性があると指摘されています。

しかし、気候変動への自社の取り組みを戦略的に評価し、適応の失敗を回避できる方法も存在します。

適応の失敗を避けるには? 適応とレジリエンス構築の方法

1)リスクマネジメントのマインドセットを強化しましょう
今日、多くの企業経営者は、気候変動の影響は主に事業拠点の建造物などの施設への直接的な被害といった物理的な影響だと考えています。しかし、気候変動がもたらす大災害は事業運営を脅かし、収益の減少や評価額の低下を引き起こす可能性もあります。つまり、拠点の建造物などの施設そのものの物理的リスクと、周囲環境との依存関係に基づくリスクの両方を見て、自社の事業拠点を守る必要があるのです。例えば、事業拠点に直接的な被害が出た場合だけでなく、その拠点が依存する電力網などのライフラインにも被害が出た場合にも、その拠点は運営停止に追い込まれる恐れがあります。

2)自社の本当の脆弱性を総合的に理解しましょう
例としては、各拠点に関する気候変動シナリオ分析や、事業運営を支える関連エコシステム(電力、輸送ネットワーク、従業員)のストレステストの実施が挙げられます。

3)各拠点における気候適応戦略のROIを評価しましょう
気候適応策のベンチマーク評価を一貫した指標で大規模に行うことは、以前から簡単ではありませんでした。通常は、リスクエンジニアや個人の専門家が現場を訪問し、その拠点に特化した評価を長時間かけて行います。広く普及した一貫性のあるフレームワークがないために、ある拠点を膨大な参照集合との比較で分析することや、時間とともに変化するレジリエンスを一定の基準で追跡することは困難になっています。

また通常、リスクエンジニアは、拠点を支える広範な地域社会やインフラのレジリエンスまで深掘りして検証することはせず、拠点そのものだけを分析します。結果としてその拠点の所有者は、すべての拠点のリスク監査を行う機会や、どの拠点に一番に注意すべきか、どの気候適応戦略が最大の費用対効果を得られるかを特定する機会を逃してしまいます。

こうして、限定的な評価を広範囲の適応策に一様に(しかも大抵は不完全に)当てはめれば、適応に失敗するでしょう。

One Concernにできること
One Concernのテクノロジーは、時間がかかる上に対象範囲の狭い従来の定性的なプロセスから、わずかな時間で総合的な定量分析が可能で、かつ拠点が何カ所あっても拡張できる定量分析へ、最善の評価に関する業界の基準を塗り替えます。そうすることでOne Concernは、事業や事業拠点を守る気候適応と、地域社会の持続可能な変革を可能にします。

当社の先進的なリスク分析プラットフォームは、この目的のために構築されたデジタルツインを活用し、機械学習と包括的で精選された入力データによって支えられています。ユーザーは、拠点に対しさまざまな機能を比較検討し、どの適応策を導入した場合に最もレジリエンスを高められるかを判断できます。また、One Concern Downtime Statistic(ダウンタイム・スタティスティクス)(1CDS™)をはじめとするレジリエンス指標により、拠点が直面しうる複数の事態を想定し、危険から効果的に拠点を守り続けながら、価値を最大化し緩和コストを最小化できる対策を選択することができます。